この著者のアダルトメディアや風俗産業に関する書籍は多く読ませて頂いている。この本についても非常に興味深く読み進めることができたとともに、現在の日本社会が抱える問題について、特に若者の貧困について考えさせられた。
ただの借金でしかない奨学金制度や世代格差、ブラック企業等について多くの指摘をしており、そのどれもが考えさせられる内容である。その中で紹介される女子大生の境遇は悲惨であり、風俗嬢になって高単価の性的サービスに従事するしかなくなるまでに彼女らを追い込んでいる日本社会の現状に対し、多くの指摘点が述べられている。
ただ紹介されている女性達については、本当にこれらの悲惨な境遇の女性達が大部分を占めているのか、それとも極端な例を出しているだけなのか、データを示しておらず疑わしい部分もあったのも確かである。この本で紹介されている風俗嬢の境遇は実に悲惨なものであるが、安くない入学金と授業料、そして生活費が必須となる学生生活に対して、情報収集もせず自らそのような悲惨な境遇に大勢の女性が飛び込むということはにわかには信じられなかった。また第6章には、バブル時代に華々しい学生時代を謳歌し、現在は熟女AV女優として活躍している方等が紹介されているが、これなどは読み物としては面白いが、比較対象としては少々極端な例だろう。
さらに、これは果たして貧困の問題なのか、と思えるような事例も紹介されている。例えば、第4章には彼氏に勧められるままソープ嬢になり、稼いだ金をことごとく搾取される女性まで登場するが、このような例については、女性の貧困云々ではなく単に騙される側の判断力の問題ではないだろうか、とも考えてしまう。
しかし、著者がいうように「失われた20年」を経て格差拡大が続いている現在のご時世で若者に深刻な生活を強いられる者が増えていることは紛れもない事実であろう。「おわりに」では、大学進学が控えている若者に対して、実際に進学する前に経済的に回収できるのかどうかをよく考え、どの道に進むべきか熟考するべき、という指摘をしている。この本がこれから高校・大学に進学する学生自身や、それらを子供にもつ親に対して危機感を抱かせ、考えるためのきっかけになればよいのではないか、と思う。
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