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darklyさん
darkly
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タイトルに惹かれて。だいたい私は題名とジャケットに釣られる傾向が強くはずれも多いのですが、これは良かった。
シュールな感じのタイトルに惹かれて読んでみました。中島京子さんは「小さいおうち」で直木賞を取った方ですが、今まで読んだことはない作家でした。予備知識もなにもなく読み始めましたが、意外にも、と言ったら失礼ですが、珠玉の短編集でした。とても気に入りました。

「リズ・イェセンスカのゆるされざる新鮮な出会い」は、日本人が自省的というか島国根性というか、そういう特性をうまく使った話です。西洋人との会話で、相手の話すことが変だったり、不快だったとしても多分日本人は「きっと自分に理解する力がないのだろう」とか「文化が違うのであって普通のことなんだろう」というように、原因が自分にあるとまず考えると思います。でもやっぱり変だったという話です。中島さんを調べると両親がフランス文学者でした。やっぱそこらへんもあると思いました。

「妻が椎茸だったころ」は、凄く村上春樹的な短編という印象です。亡くなった妻のノートを見ると、自分が知らなかった妻の側面があって・・・といった涙を誘う夫婦もののパターンかと思いきや、ちょっとひねって、ちょっとシュールな、でもやっぱちょっといい話だなあという感じです。

「蔵篠猿宿パラサイト」は、SFとホラーが入り混じった感じの話ですが、なんといっても私が嬉しかったのが、私の大好きな作家のラヴクラフトの「宇宙からの色」という小説が話の中に出てきてることです。ラブクラフトは宇宙的な恐怖というものを描くのがうまい作家ですが、そのオマージュのような作品です。

「ハクビシンを飼う」は、この短編集の中で最も気に入った作品です。インパクトはあまりなく、もしかするとこの本を読んだ人で人気投票をすると最も人気がない作品かもしれません。
叔母さんが亡くなり、その家を整理に訪れた女性に起こることを描いた作品です。
自分の人生で起こったことで、後で考えてみると「なぜ、あのときこういうことをしたのだろう?」とか「あれは本当にあったことなのか?」という経験は誰にでもあると思います。この作品では特に異変だとか怪異が起こるわけではないですが、ちょっとガルシア=マルケスの小説のマジックリアリズムっぽい雰囲気で終わるところがなんとも言えない余韻を残します。

この作者は西洋の短篇を書くのがうまい女流作家のような雰囲気があるなと思います。話の捻り方とかシュールな感じとか。
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darkly
darkly さん本が好き!1級(書評数:337 件)

昔からずっと本は読み続けてます。フィクション・ノンフィクション問わず、あまりこだわりなく読んでます。フィクションはSF・ホラー・ファンタジーが比較的多いです。あと科学・数学・思想的な本を好みます。

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