カラマーゾフの兄弟〈下〉

封建社会への復讐——わたしのスメルジャコフ論
西側の対ソキャンペーンに利用された作家の悲劇。
「<蒼ざめた馬を見よ>に関するパブリシティは、テレビ、ラジオなどの媒体にまで、驚くほど巧妙に波及して行った。それはまるで、世界のジャーナリズム全体を対象に、ある一貫したキャンペーンが企まれているかのようだった。それほど組織的に、また強力に、しかも急速に、その作品は世界中に広がって行ったのである」
そして、件の老作家ミハイロフスキイが逮捕された
。彼の部屋の天井裏から原稿のコピー、外国からの送金と思われる多額のドル紙幣が発見されたが、作家は自分にはまったく身に覚えがないという。もちろん、西側諸国はこの逮捕劇を厳しく批判した。
こういった一連の流れも、鷹野にはどうにも納得がいかなかった。ミハイロフスキイは、なぜ自分が書いたと認めないのか。そして、その頃になって、鷹野は、そういえば件の作品は自分が好きだったミハイロフスキイらしさがなかったと思い始める。
謎は、最後に解ける。ミハイロフスキイは、西側の対ソキャンペーンに見事に利用されたのだった。そのミハイロフスキイは、逮捕されたときにこう言った。「あの作品は、自分が書くべきだった」「わたしは、この本を書かなかった。しかし、それ故にこそロシアの作家であるわたしは罰せられるべきだ」
ソ連側も、ソ連側の政治的考えから、ミハイロフスキイは無実であるという証拠を握っていながら、それを握りつぶそうとしていた。ミハイロフスキは、どちらにも逃げられない。彼は西側に利用されて書きもしなかった作品を書いたことにされ、ソ連側に利用されて書いてもいないのに有罪の判決を受けるさだめを負わされたのだ。
鷹野に真実を告げたソ連側の諜報員は、見てはならない世界を見てしまった。西側もソ連も、キャンペーンのためには一個人の生死など何とも思っていないのだ。彼のやりきれなさは、鷹野に真実を告げることで、少しは解消したのだろうか。二人で、目の前に開いた真っ暗な闇を見ているという共感が少しは彼を救うのだろうか。





封建社会への復讐——わたしのスメルジャコフ論

つい言いたくなることが結構あります。死刑! 死刑!

「マイナス45度では、唾が雪の上ではじけることは知っていたのだが、今吐いた唾は空中で砕けた。いまや温度がさらに下がっているのはまちがいない」(本書収録『たき火』より)

グローバル化というと欧米を知ることのように思う人が多いのでしょうが、アジアを知っておくことも必要でしょう。

東日本大震災で福島第一原発が水素爆発をおこしてからの9年間。箝口令が敷かれた作業員たちを、東京新聞記者が一人ひとりにていねいに取材し続け見えてきた、リアルな福島第一。
この書評へのコメント