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見えてしまった秘密を、そのままにしておけますか?

楽園 下
上下巻合わせての書評です。

ライターの前畑滋子のところに、ある奇妙な依頼が舞い込んできた。萩原敏子という50代の女性が、12歳で亡くなった息子が超能力のようなものを有していたかもしれないのだが本当にそうなのかどうか真実を知りたい、というのだ。

敏子は、クレヨンで絵を描いたノートを持ってきていて、その中の一つの絵が息子が亡くなってから発覚した事件があった家の絵ではないかと言った。その事件とは、隣家の火事の貰い火で半焼した家の主が長女を16年前に殺して床下に埋めたと自首して主の言葉どおり床下から死体が見つかったというものだった。
滋子は、敏子の息子等に超能力があったとは思えなかったが、絵に描かれている特徴的な風見鶏が気になり、等が生前その家を見たことがあったのではないか、と考えた。そして、その線でその事件の関係者たちに話を聞く一方、等についても調べていった。

等の話、事件が起きた土井崎家の話、そして、ときおりはさみ込まれる断章。等には超能力があったらしいと分かった時点で、では等はどこでこの事件の関係者と接触したのかということになるのだが、そこからの展開がすごい。「ああ、それでこの断章か」と腑に落ちる。

前畑滋子は、『模倣犯』に登場したライターである。何としてでもこの未曾有の事件を自らの手で記事にしようと意気込み過ぎて、あまりの毒気の強さに自らも飲み込まれてしまった。そんな滋子なので、この作品には『模倣犯』に関係することが時折はさみ込まれている。前畑滋子が『模倣犯』事件から前に進むために、作者自身も『模倣犯』から解き放たれるために、この作品は必要だったのだろう。
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  • 掲載日:2025/11/18
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